堀江さんは千葉県出身。
七年ほど前から移住なさって、今は北軽井沢でネイチャーガイドをしてらっしゃいます。
健康的な肌色のナイスガイで、北軽井沢の自然に深い興味と敬愛をいだいておられます。冬だろうが夏だろうが人跡未踏の森の中を踏破する体力の持ち主で、この日も私はストック以外手ぶらでしたが、堀江さんはリュックを背負っていました。
→この有様。
群になって宿ってました。
ずうずうしいことに、ヤドリギにも好みがあります。針葉樹は嫌いで、広葉樹を好むそうです。樹木に根を張って宿主の養分を吸い取るわけですが、宿主の木を枯らしてしまうようなことはありません。
宿主の木に必要のないミネラルだけを吸うそうです。
ヤドリギは、広葉樹に軒を借りて、鳥たちを使い走りにしながら、あんな高いところでわれわれを見下ろしているわけです。鳥たちを使うにしても、木ノ実で歓待してから、さまざまな方面へ営業してもらっています。
鳥、というか動物は、繁殖を除けば、することといったら食べることとフンをすることくらいでしょう。それ以上のことといったら、頼んだってしてくれません。ヤドリギはちゃっかりしています。その実情にあわせて、相手を使役しています。
少なくともこの方針が北軽井沢で成功を収めているのは間違いないようで、たしかに「面白いやつ」に違いありません。
ヤドリギのことで笑いながら先へ進むと、カケスが一羽、前方に舞い降りました。
「カケスの好物、知ってます?」
堀江さんは別の話をしてくれました。

忘れられなかったドングリは鳥や小動物のエサになります。特にネズミはドングリが大好物、実の部分はあらかた食べてしまいますが、そのネズミたちが食べ残す部分があるそうです。ドングリの胚。
胚はたいそう苦いので、ネズミの口には合いません。食べ残された胚はどうなるかというと。
発芽するのだそうです。ドングリは胚だけになっても芽吹きます。ミズナラは丸々と実を太らせますが、実の部分は発芽にあまり関係ないらしい。
つまりミズナラがドングリの実を太らせるのは、カケスや小動物にふるまうため、ではないかと思われます。
ミズナラは秋、降り注ぐようにドングリを実らせます。気前のいい大旦那みたいで、
「さぁ寄っとくれ」とでもいうようです。「遠慮なく食べておくれ。今年は豊作だよ」
ありがたい話で、ミズナラ一本でどれだけの小動物が助かっているかわかりません。しかし、この森の食料庫のようなミズナラにも、確率による計算がある。それこそ、相手の知能の高まで計る冷徹な計算、これがあったればこそ、すすんで鳥や小動物を養っているに違いありません。
ヤドリギにせよミズナラにせよ、この知恵はいったいどこから来たのでしょうか。
この「絶妙さ」をもたらした進化の不思議のことなど話しながら、次のポイントにさしかかりました。そこには、進化を理解してもなお残る謎がありました。